My Favorite Things

好きな曲とか

The Minstrel Boy

https://youtu.be/_lvh02-Cjwk

 

The Minstrel Boy

The Minstrel Boy to the war is gone
詩人の男は戦争に行った
In the ranks of death you will find him;
彼の名は慰霊碑に刻まれるだろう
His father's sword he hath girded on,
父親の剣を腰に差し
And his wild harp slung behind him;
手作りのハープを背にしょって

"Land of Song!" said the warrior bard,
「歌の国よ!」戦士となった詩人が言った
"Tho' all the world betrays thee,
「世界の全てが汝を裏切ろうとも」
One sword, at least, thy rights shall guard,
「少なくとも一本の剣が汝を守り」
One faithful harp shall praise thee!"
「一つの忠実なるハープが汝を讃えるであろう!」

The Minstrel fell! But the foeman's chain
詩人は敵の手に落ちた! だが敵国人の鎖によっても
Could not bring that proud soul under;
誇り高き魂は屈しなかった
The harp he lov'd ne'er spoke again,
彼が愛したハープは二度と鳴ることはない
For he tore its chords asunder;
彼が弦を引き裂いてしまったから

And said "No chains shall sully thee,
そしてハープに言った、「どんな鎖にも汝を汚すことはできない」
Thou soul of love and brav'ry!
「汝の愛と勇気に満ちた魂を汚すことはできない」
Thy songs were made for the pure and free, 
「汝の歌は純粋で自由なものたちのために歌われる」
They shall never sound in slavery!"
「屈従の下で鳴ることはない!」

The Minstrel Boy shall return again
詩人の男は帰ってくるだろう
When we hear the news, we will cheer it,
その知らせを聞いたら誰もが喜ぶだろう
The Minstrel Boy shall return again
詩人の男は帰ってくるだろう
Torn perhaps in body, not in spirit.
肉体は引き裂かれても魂は還るだろう

And then may he play his harp in peace,
そして彼が平和の中でハープを奏でられんことを
In a world as heaven hath intended,
天が望まれるような世界で
Where all the world of war shall cease,
全ての争いがやめられ
And every battle must be ended.
すべての戦争が終わった世界で

 

アイルランドの愛国歌。いくつかの映画に使われているのでも有名。ブラックホークダウンなど。
ダニー・ボーイと並んで有名な、名曲。
のっけから、
「詩人の男は戦争に行った。彼の名は慰霊碑に刻まれるだろう」
ってのが凄い。
いきなり死ぬところから始まる。ダメじゃんっていう。
ポビュラーな愛国歌でそんなことあるのかよって、思わない?

でも、無駄死にではない。何故、無駄死にではないか。いかにして彼が死ぬことになるのか。それがこの曲の歌詞のかっこいいところなんです。

クロアチアの「U boj」も「われらの街は既に火の中、その熱はここまで伝わりくる!敵の咆哮が響き、彼らの怒りは絶頂に達す!」と窮地から始まる。
あれはもっと勇ましい曲だけど。

ちなみにこの曲と同じくらい有名なアイルランドの歌でダニー・ボーイは戦場に行ったボーイのお母さんが死んでしまう曲。正確には「お前が戦場から帰るのが遅くて、私が死んでしまっていたとしたら、私の墓の上をそっと歩いて、墓石に愛していたと言ってくれ」という曲です。


さて主人公は弱い男なんですよ。たぶん虚弱体質。父親の剣は有るが体など鍛えずに過ごしてきた。普通なら軍隊に入らないような男。
そんな男が、戦況が悪く、おそらくは志願して、戦争に行ってしまった。
歌の国よ! 彼は自分の行動がパトリオシズムによるものだと宣言する。世界の全てがお前に叛こうとも、少なくとも一本の剣がお前を守るし、少なくとも一つのハープがお前を讃えるであろう!

ここかっこいいよね。
政治体制とか王様とか無条件の愛国心というわけではなく、文化に対して宣誓しているから、時代や背景によらず共感できる歌詞になっている。
ショスタコーヴィチの「忠誠」は見習ってほしい。
faithful harpというのは古い英語の歌や歌劇にたびたび出てくる、使用者の感情を物に仮託する表現。訳出は困難だったので直訳とした。通じるからいいか。
 シェイクスピアロミオとジュリエットのジュリエットが自殺するシーンの、"O happy dagger!" と同じですね。「短剣よ、お前は幸せな短剣だ!」というのではなく「ああ、ここに短剣があって良かった!」くらいの意味ですね。